京極夏彦の「絡新婦の理」を再び読んだので感想を語ってみる(ネタバレあり)
通勤中だったり人気のうどん屋に並びながら、京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズを読み進めていますが、先日「絡新婦の理」を読み終えたので、感想を語っていきます。
全体を通じての印象ですが、本作は百鬼夜行シリーズの他の作品と比較すると、演出よりも事件の構造の緻密さに重点が置かれているという点で、一般的なミステリに近い雰囲気かなと思いました。そしてそのように思わせられる要因の一つとして、本作の語り手が関口ではないからだと僕は推察しています。
彼が語り手のパートでは、精神世界というか彼の夢想している空間の描写がそれなりにあるため、彼の口から語られる事を鵜呑みにして良いのか、読者は不安を与えられる(そしてそれが本シリーズが醸し出す魅力でもある)のですが、本作は彼がほとんど登場しないため、あくまで同シリーズ内の他作品と比較してですが、得体のしれない雰囲気感は割と薄い印象を受けました。起きる事件自体も、全く関連性が見いだされない2つの連続殺人事件が、実は1つに繋がっていて裏で糸を引いている人物がいるという複雑な構造になっているため、それを重点的に描きたいがために、精神世界に行きがちな関口はあえて表に出さなかったのではないかと思います。
かと言って、当シリーズならではの要素が無いかというと全くそんなことは無く、京極堂の憑き物落としは今回も炸裂しています。本作は性別をテーマにして深く掘り下げていきますが、終盤で、男系社会・女系社会の歴史からフェミニズムの話に繋がっていくところは非常に読みごたえがありますね。
あと、本作で登場する織作家の女性たちは、皆タイプは異なるが美人として描かれており、もし実写化したらキャストはどうなるのかなと少し考えてしまいました。しかし、四女の碧が色々な意味でハードルが高く、やはり無理だろうと断念したのでした・・・(笑)
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