京極夏彦の「陰摩羅鬼の瑕」を再び読んだので感想を語ってみる(ネタバレあり)
前の記事からほぼ間が空かずですが、京極夏彦先生の百鬼夜行シリーズの7作目である「陰摩羅鬼の瑕」(おんもらきのきず)を読み終えたので、感想を語っていきたいと思います。ちなみに今更ですが、「7作目」というのはあくまで本編ベースのカウントで、外伝はノーカウントなのであしからず。
前作の「塗仏の宴」がかなりの長編でしたが、本作は反動なのか短くなり、分冊文庫版にして3冊分です。ですが内容は濃密で、百鬼夜行シリーズの中でもかなり好きな作品です。
前作で冤罪の憂き目にあった関口がなんとか復活し、過去に何度も結婚式の後に花嫁が殺害されてしまい、犯人は見つからず未解決のままであるという呪われた「鳥の城」に榎木津の付き添いとして向かうのですが、そこで出会う館の主人、通称「伯爵」との対話がまず面白いです。シリーズを通して主に語り手のポジションということもあり、これまでの作品ではあくまで一人称として関口自身が自分を評することはあれど、第三者から見た描写はあまり無かった(稀にあっても表面的なネガティブな面ばかり)のですが、本作では伯爵視点のパートもあり、関口を興味深い人物として捉え、出会いを待ち望んでいるのがこれまでには無かった展開です。
また、事件のトリックもいかにも百鬼夜行シリーズらしいというか、ただ犯人を突き止めるだけではない、憑き物落としならではの事件の収め方をしており、非常に読み応えがありました。
そして、本作では京極堂が憑き物落としを行うより前に、関口が真相に辿りついてるというのがアツいですよね。それは事件の真相のカギが死の概念への認識にあり、日頃から死に対し目を背けたり向き合っている関口だからこそ成しえたというのがよく出来ています。本作は語り手である関口自身を掘り下げているという特徴もあるんですよね。
また、本作におけるもう1人の語り手である伊庭もいい味出してます。警察官時代に起きた花嫁殺人事件を担当し、未解決のまま退官して余生を過ごしていたものの心残りがあり、過去に別の事件で知り合っていた京極堂のもとを訪れることになるのですが、事あるごとに語られる、亡くした妻と子に対する後悔の念が読者(というか僕)に非常に刺さります・・・。この手の描写が刺さる年になったんだなぁと、しみじみと感じたアラフォーなのでした(笑)
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