「巷説百物語」シリーズ読了!感想を語ってみる(ネタバレあり)

「巷説百物語」シリーズ読了!感想を語ってみる(ネタバレあり)

先日、京極夏彦先生の「巷説百物語」シリーズの最終巻である「了巷説百物語」(おわりのこうせつひゃくものがたり)を読み終えました。いや~、面白かった!

今年の6月頃に、遂にシリーズ完結!最終巻発売!というニュースをたまたま見かけたのですが、当シリーズは初めの巻しか読んでいなかったため、改めて一番最初の巻から、刊行順に読み進めていきました。元々、京極先生の作品はそれなりに読んでて、その中でも有名な「百鬼夜行」シリーズはおそらく外伝?も含めて全巻読破しているのですが、当シリーズも結構巻数が多かったので、読み応えがありました。おかげで通勤中の移動時間は全く苦ではなくなりましたが、その代わりに睡眠時間も削られていました(笑)

色々語りたいこともあるので、本筋にはなるべく触れない範囲で感想を語っていきたいと思います。

公式サイト→ 「巷説百物語」京極夏彦 [角川文庫] – KADOKAWA

■シリーズの構成について

「巷説百物語」シリーズですが、全7作で以下の順に刊行されています。

  1. 巷説百物語(以降『無印』と表記)
  2. 続巷説百物語(以降『続』と表記)
  3. 後巷説百物語(以降『後』と表記)
  4. 前巷説百物語(以降『前』と表記)
  5. 西巷説百物語(以降『西』と表記)
  6. 遠巷説百物語(以降『遠』と表記)
  7. 了巷説百物語(以降『了』と表記)

作中の年代は各巻ごとに違いますが、基本的に江戸時代後期を舞台としています。『無印』では、戯作者(今でいう小説家)を目指している山岡百介が、妖怪の仕業を装った仕掛けで人を欺く御行の又市と出会い、様々な事件に巻き込まれていったり、自分から巻き込まれに行ったりしていく物語で、1話完結の短編集になっています。各話で妖怪をモチーフにした現象が発生するものの、あくまで人の手によるものであるというところが「百鬼夜行」シリーズと共通しているところですね。

又市に知らず知らずの内に仕掛けの一部として利用されながら、事件の解決に一役買っていく(買わされている)展開で、叙述トリックもモリモリで読者も騙されてしまうのが心地よいです。ここで完全にフォーマットが確立されているので、『続』以降もそうなのかな・・・と思いきや、その路線を捨ててしまうから驚きです。辛うじて『続』は『無印』から地続きの話になっていますが、主要な各登場人物を掘り下げる形でテイストが変わっており、『後』以降は各巻で時系列や場所も変わるので、シリーズ全体を通して見ると群像劇のようになっています。

そのように各巻を追うごとに話が広がっていき、最終巻の『了』でそれらが上手く活かされながら綺麗に完結しているので、どこまで最初から計算していたのかを先生に訊いてみたいところです。

■登場人物について

やはり、「巷説百物語」シリーズを語る上で外せないのが、個性的な登場人物です。事件の解決に向けて暗躍する又市一味は、二つ名と共に特殊な技能を持っていて、それがこの作品の魅力の一つですね。

「百鬼夜行」シリーズからハマった身としては、どうしてもそれと比べてしまうところがありますが、あちらは憑き物落としの中禅寺と探偵の榎木津以外は、特にすごい能力を持っているような描かれ方はしていませんが、当シリーズは一応超常現象は無い前提で描かれているものの、各人物の仕事ぶりはどれも人間離れしています。山猫廻しのおぎん、事触れの治平、算盤の徳次郎など、どれも魅力的なキャラクターですが、一番好きなのは六道屋の柳次かなぁ。死んだ人の特徴を事細かに記録して、その人になりすますことで生きているように見せかけるのを得意としており、六道亡者踊りとも呼ばれています。なんかカッコいい(笑)

また、シリーズを通じて重要なポジションを占めている、山岡百介についても触れないわけにはいかないでしょう。戯作者を目指す表の世界の住人でありつつも、又市たちに出会うことで裏の世界に憧れを持ってしまい、葛藤を抱く様が『後』で上手く昇華されていて、ラストは本当にグッときました。シリーズでどれが一番面白かったかと訊かれたら『了』と答えますが、どれが一番良かったかと訊かれたら『後』と答えるぐらい、好きな巻ですね。

■『了』について

『了』についても少しだけ語りたいと思います。

『了』は、狐狩りを生業とする藤兵衛の目線で話が語られていきますが、藤兵衛は裏の仕事として、依頼主から頼まれて人の嘘を見破る「洞観屋」の顔を持っています。その特殊な技能を持っているが故に、又市たちや、シリーズを通じて語られている強大な力を持つ存在との抗争に巻き込まれていきます。藤兵衛は又市たち(作中では「化け物遣い」と呼ばれている)とも違う立ち位置で行動していますが、狐狩りの生業から培われた独自の信条を持っており、非常に魅力的なキャラクターです。人をだますことを得意とする又市一味と、人の嘘を見抜くことが得意な藤兵衛の攻防も目が離せないですね。

また、「百鬼夜行」シリーズの中禅寺秋彦の先祖に当たる中禅寺洲斎も登場し、物語に深く関わってきますが、その中で「化け物遣い」と「憑き物落とし」の違いが明確に語られており、「百鬼夜行」シリーズのファンとしては、その点も面白いところです。

Kindle版で購入したので、購入時はどのくらいのボリュームがあるのかよく分かっていませんでしたが、最後に読み終わってページ数を確認したところ、1100ページ以上ありました。超大作・・・!

ここ数年は読書から離れていたのですが、「巷説百物語」シリーズに触れて、改めて読書っていいなって思いました。京極先生の作品は、シリーズ間で設定やキャラクターが一部共通しているようなので、他のシリーズも読んでみたいところ。

ただその前に、最近出た「百鬼夜行」シリーズの最新刊である「鵼の碑」をまだ読めていないので、それに手を出す前に既刊分の復習をしないと・・・。こちらはもう何年も続編を待ち望んでいたので、万全な状態で臨みたいですよ。

投稿者:

ヌマノ

広島生まれ、千葉育ち、神奈川在住を経て埼玉に移住した30代会社員。休日はゲームに勤しんだり、街を歩いたり、美味しい食事を求めたりする日々を過ごしています。

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